詩 『カタハラさん』
『カタハラさん』
カタハラさんは静かな人だった
真面目に労働しても
主張しない
穏やかで小心者に見えた
カタハラさんは以前
自衛隊員だったらしい
ケガだったか事故なのか
足を引きずって
顔も半分変形していた
最後に見たのは
西柳公園の東側で
ぽつんと座っていた
昼休みだった
煙草を吸いながら
大気の中をカタハラさんは見ていた
滑稽なほど恥ずかしがり屋で
わたしが「カタハラさん」
と言いながら寄って
「オレ、そこの現場だ」
と当たり前の話をした
そのうちカタハラさんをまた見つけ
声なしでお互いニコッとして
昼休みのカタハラさんは座って
手を振った
そのうちカタハラさんが
亡くなったと聞いた
最後に見たのは10年前のこと
あの西柳公園の東側に
座っていたのはカタハラさんだった
カタハラさんの人生は
どんなふうだったんだろう
と たまに思う時がある
多くではないけど
少なくもない人たちが
ポツンポツンと消えてゆく
小雨になって地面が泥水になって
大きなカバンを持って
尽きて倒れた俺たち
泥水がビジャンとなり
目前の泥水の景
せめて気が向いたら
俺たち部族の
声を出して小さな声で
カタハラさんもまた
あなたの名前も呼ぶしかない
手を合わせ
慰めるのなら
南無阿弥陀仏と唱えます
カタハラさんの
寂しさは最高級だ
わたしは生き証人だから
せめて言葉の花を
カタハラさんに
たくさんの人たちに
亡くなっても
思いは通じるらしいから
こんなふうに
思いを
言葉船に載せて
言葉を書いている
滑稽なほどの
恥ずかしがり屋さんの
カタハラさんが
ニコッとしたら
うれしいなぁ

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