詩 『2018.6.17 作 去年2025年に亡くなった信じられる大事な友達のひとりである篠田健一さんへの詩 』

 


 


『2018.6.17作  去年2025年に亡くなった信じられる大事な友達のひとりである篠田健一さんへの詩』


彼は

自転車を漕いだ

大きな体で

足をふんばり

ペダルを漕いだ


川を渡った

もう一つの

川も渡った

どこまでも

彼は探しつづけた

失ったものを

探して


夏は彼の頭上を

叩いた

熱射は

彼の体を叩いた

それでも彼は

朝から出かけ

夕まで家に

戻らなかった

失ったものを

探し出すまで

何日も


夜はお酒を飲んだ

そして

失ったものを

思った

眠れない夜もある

それでも

夏の中

彼は自転車を漕いだ

手当たりしだいに

探した


けれど

見つからなかった


彼は思った

失ったものを

その匂いや

表情や

声を

仕草を

言葉を


朝になったら

また彼は自転車を漕いだ

四方

八方

彼は向かった

それでも

失ったものは

見当たらなかった

額に汗をかく

背中のシャツは冷たく濡れて

太陽は彼を叩いた

驟雨も彼を叩いた

噂も彼を叩いた

彼自身も彼を叩いた

それでも

探してまわった


ある日

彼は

失ったものを

見つけた

失ったものは

彼の思うより

もっと遠くにあったのだ

見つけたのは

言葉だった

彼は言葉に叩かれた


そして彼は

失ったものに

打たれ

自身の気を失った


彼はもう探さなかった

どこにも行かなかった

夏はもう彼を叩かない

驟雨も突風も

彼を叩かない


彼は自身を叩いた

夜の街に出て

酒を飲んだ

彼は酒に叩かれ続けた

それが本望だった


夏が過ぎ

彼は思った

とりあえず

日々をやり過ごす

日々は彼を叩かない

日々は彼を守った


失ったものを

忘れることはないだろう

時は彼を確実に癒した

大きな体の彼を

時が両腕で抱きしめる


それでも

彼はある瞬間

一点を見つめる

そして

生活の時に返る


笑うこともない

泣くこともない

なんでもない顔をして

日々の舟に

揺れながら

生きている

生きてゆく

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