詩  『海を感じる人』









『海を感じる人』


あの人は冬になると
茶色のコートを着ている
春になっても雨のときは
茶色のコートを着ている


あの人は何もいわない
黙っている
あの人の横顔
まっすぐむいて
すすんでいる


あの人の背中から
海がひろがる
貝殻
海藻
青い波
緑の波
白い波
海面を動く風
たまには 太陽


海の中は
微生物
青い魚
赤い魚
黒い魚
珊瑚礁
海苔
ウツボ
イカ
海亀……
知らない生物たち
地上の森の如く
フシギな生物の領域
海の香り
塩の味
しょっぱい世界で生きている
不思議でしょうがない


あの人は海を持っている
ポケットの中に海を入れている
ポタポタ落とすのは
水だと思ったけど
ポケットの中に海がある
三角波からたくさんの海が生まれている 1つ2つ 3つ4つ 5つ 6つ……
海は無限だ
三角波から数多の海の子供が
出現している
海は宇宙だ
果てがない


あの人から続くところは
太平洋 
静岡
伊良湖岬
伊勢
熊野から続く22km の
七里御浜
その先
串本
土佐
九州まで
大きな 太平洋
暖かい海を
靴から胸から髪の毛の先まで
海を持っている


社会的には
海を感じる人
あの人は何もいわない
黙っている
こんな優しさって
あるんだな
海の中の潮の流れまで
その人は体に海を持っている
茶色のコートの中に
海を隠していたのだ






 

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