詩『あなたには未来がない』 彼が読むことはないだろうけれど この詩を山上徹也氏に捧ぐ あなたには未来がない 昨日も今日も おそらく明日も 思い出して 過去の中で生きていくのだ あなたがやったこと あなたがやるべきことと それも全部 過去になっていく 今あなたが思っていることも 確実に過去になっていく 朝7時に起床 8時に朝食 体操と作業 運動 昼食 午後からの作業 運動 午後3時に少しのおやつ 午後6時に夕食 午後9時に就寝 週に2回の入浴 年に1回の血液検査 栄養士が入る 食事 手紙を書き 手紙を受け取る 髪の毛が長くて 後ろで束ねた姿を 自分でも見ることはない わずかな青空の下を通る時 車の窓から 人々が見えた あなたは自分が思っているより たくさんの人から憎まれ あなたは自分が思っているより たくさんの人から愛されていることもあなたには分からない あなたは作業の中で 眠る前後で 思い出す 夜中にトイレに行く時に 明け方 目が覚めて 閃きの思いが出る あなたがやったことは よくも悪くも あなたは思考して 思想家になる 哲学者になる 詩人になる 宗教学者になり 手を合わせる けれども あなたの未来は一切ない あなたは過去の中で生きていく 「何があっても生きてください」 その手紙の中に 知らぬ人からの手紙の中に あなたは少しのやすらぎを考え 希望ではなく やすらぎの中で 生きていくのだ 誰かが花を贈る あなたはその花を見た時 「綺麗やな」 と声が出た 自分にしか聞こえない声を あなたの胸の奥に届く声を あなたには未来がない 昨日も今日も確実に明日も 思い出して あなたは生きていくのだ あなたのことを 本物の希望者である と あなた自身が 実は分かっていないのだ 静か #山上徹也 #詩